1954年/カラー/原作コーネル・ウールリッチ/脚本ジョン・マイケル・ヘイズ/出演ジェームズ・スチュアート、グレース・ケリー、ウェンデル・コリー
裏窓 – 解説
ウイリアム・アイリッシュの別名でも知られる、コーネル・ウールリッチの短編小説が原作である。ヒッチコックは例によって原作重視ではなく彼好みに大幅な改変をしたが、なかでも、ジェフを報道カメラマン(原作ではたんに「スポーツマン・タイプの男」とあるだけ)にしたことは、「のそき見」というこの映画のポイントをひときわひき立たせるのに役立っている。足を骨折して動けない人物という設定は、もちろん犯人に襲われるサスペンスを増加されもするが、彼は外部で起っていることを自分で直接確認できないのであるから、そういう点でもサスペンス度を高める。また、原作では看護の男を映画では恋人リザと看護婦ステラにふりわけた。その恋人を売れっ子のファッション・モデルという設定にし、グレース・ケリーを配して、熱っぽいラブ・シーンも挿入し、華麗さとロマンティック・ムードを加味することも忘れていない。ステラには性格女優セルマ・リッターを選び、コメディ・リリーフ的な味をもたせている。そういう感覚をもたせながらも、各窓の人々の日常生活にリアリティをあたえている演出もみごとである。「救命艇」などと同様に、音楽も、作曲家のピアノやラジオなどの現実音だけである。物語は水曜の朝にはじまり、土曜の夜でクライマックスをむかえ、そしてエピローグとして翌日曜日(もしくは数日後かもしれない)をもって終わる。その時間の推移は、空の色や光線の具合、そして各人物の行動の行動で説明しているが、同時にフェイド・アウトをもって各時間の区切りをつけている。
なお、殺人をあつかいながら死体がズバリと出てこないという点でも、これはヒッチコック映画としてユニークである。