The Thirty-Nine Steps/1935年/ゴーモン・ブリティッシュ作品/白黒/制作:マイケル・バルコン/協同制作:アイヴァ・モンタギュ/原作:ジョン・バカン/脚本:チャールズ・ベネット、アルマ・レヴェル/撮影:バーナード・ノウルズ/音楽:ルイス・レヴィ/出演:ロバート・ドーナット、マデリン・キャロル、ルシー・マンハイム
三十九夜 – 解説
ヒッチコックのイギリス時代の代表作のひとつである。ジョン・バカンの著名なスパイ小説「三十九段階」の映画化で「三十九夜」という日本のタイトルは「段階」では妙味がないとしてつけたまでのことだ。ヒッチコックは原作にかなり手を加えてヒッチコック筋立てに変えてある。犯罪者と警察の両方から追われるという、その後ヒッチコックが好むことになるストーリーを土台に、次から次へと起こる事件、めまぐるしいばかりのスピーディーな展開に加えて、複雑なディテール描写など映画的なアイディアガ横湓し、以後のヒッチコック作品の基本的な要素が出揃った作品となった。
映画を撮るということはなによりもまず、ストーリーを語ることだが、ありきたりのストーリーであってはならない。ドラマティックで人間的でなければならない。要するに、人生から退屈な時間をすべてカットしたものだ、と言うヒッチコックの考え方そのままのストーリーが展開されるわけである。